(聖蓉)



「好きよ?」

「白々しいね。」

そんなこと口に出さずともお互いに自覚しているのに。

「愛してるよ。」

「そう。」

嘘は無意味に甘く真実は苦みを唯残していく。

「その書類とってくれる?」

「ほーい。まあ私の分まで頑張ってね。」

触れ合うのを恐れているのはどちらなのか。

「紅茶飲む?」

「あら、珍しいわね。」

嬉しさは優しさはいつも覆い隠されて。


「聖。」

「ん?」

知っている。それはただの記号に過ぎないことを。


「蓉子。」

「なあに?」

知っている。それはただの夢想にしか過ぎないことを。



何時でも綱を渡っている私達はやじろべえの反対側で対面している。揺れて落ちそうでけれど相手のために危ういバランスを維持し続けている。相手のためになどというのは至上のエゴイズム。無意識の自覚でそうと知っている。
非生産的だと呆れる共通の親友は、けれど随分離れた所から傍観しているだけ。強がる私達。何に強がっている?少なくとも彼女にではない。
いいのだ、これで。生産的なものに意味があったためしなど無いのだから。

負け惜しみのような本音。勝者も敗者すらいない袋小路。

きっと、私達は死ぬまで踊り続ける。




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多分コーヒータイムの前身。あと二つくらい補完作品を構想中。