冬 (聖×蓉子)
電話はいつものように唐突で簡潔だった。 メールなら一行、行ってもせいぜい三行、と言ったところ。
雪が降ってる。遊びに行かない?
句点に続くのがだから、なのか、だけど、なのかは判断が難しいが私は気にしないことにした。どちらでも行動に代わりはない。 本に栞を挟んで閉じ、服を見繕うために起き上がる。 冷気は私を刺して、着替えを急かすよう。 留守電のような聖の台詞を反芻して、私は久しぶりにわくわくした。
待ち合わせとして指定された公園は、子供たちで溢れていた。正確には親子連れ、なのだが大人は背景になっていて、ただ無邪気なはしゃぎ声が、雪玉が、彼らの小さな体自身も皆飛び交っていて。 同じように背景になった私。雪は、ちっとも静かじゃない。ときも、あるのだと。そう確認する作業を繰り返す。 僅かずつ、外の白さは私の熱りを冷ましていく。 可愛い歓声の方に目を向ければ、2.5頭身程の雪だるまが。頬を赤くして騒ぐ子供たちを困ったように見つめていた。
やっぱり私もひと掬い、してみようかと思い屈もうとすると。正面から、そっと影が落とされた。 ブーツだけで、誰かなんてすぐに分かる。
ふと思いついて雪をひと掴み。そのまま立ち上がって、手を振りかぶって。
「……えぇ!?」
あ、楽しい。 咳き込む聖はなんだか新鮮だった。滅多に見られない、層の表情だと思う。 一瞬浮上した寂しさを雪玉がかき消した。
呆気にとられている間に、聖は二つ目に取り掛かっている。 背景から抜け出して私も雪を握り締める。余り痛くないように、なんて考えはすぐに消えてしまった。
「……それで、どこに出かけるのかしら?」
あがってしまった息が、少し悔しい。
「んー、蓉子ん家、行こうと思ってたんだけど」
「はぁ?」
濡れてしまったから、では絶対に無い口調。
ちょっと待ちなさいよ、それなら貴方が最初から私の家に来ればいい話じゃない。それにねえ、電話には……
一通り文句を言い終えても、聖はどこ吹く風。 それは勿論、家から今まで、馬鹿みたいに楽しかったけれど。
「……無駄足だったわ」
呟いて、最後の抵抗。
「そう?」
貴方の影の笑顔が揺れる。
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